科学はすべてを

栄養学に興味があるリノセウスです。科学について勉強したことや気になったことを書いていきます。雑記も書きます。

解剖実験の思い出

※動物に関するグロテスクな表現が含まれます。苦手な方は戻っていただくか、注意して読み進めてください。

 

こんにちは、リノセウスです。

今回は雑記として私の思い出話をひとつしようかなと。

私が大学2年生の時に解剖生理学実験というものがありました。秋から冬にかけて実験と実習で忙しくなる時期でした。ちょうど今ぐらいですかね。

解剖学では各臓器がどんな見た目をしているか、どこに臓器が配置されていてどのように各器官と結びついているかなどを学習します。これらを座学で勉強した後、実験で実際に動物を解剖して自分の目で見てみるというわけです。

 

当時実験をする前までは、私は特に思うところもなく実験が始まる教室に向かっていました。

教室につくと、先生と大学院の先輩方が準備をされていました。今回解剖に使う動物はラットのようでした。デシケーター(ラットを眠らせる為のガラスの容器)やジエチルエーテル(麻酔)などが各机に配られていました。

実験の手順ではまずラットを眠らせて動かなくなった後、ラットの腹部をはさみで裂いて臓器を観察する、という風になっていました。事前に班員で決めた手順では、私がはさみで裂くことになっていました。

さて、先生の話が終わり、実験開始です。ジエチルエーテルを充満させた容器にラットを掴んで入れます。しばらくは元気に動き回るのですが、だんだん動きが鈍り入れ物の底にへたりこんでしまいます。完全に動きがなくなったのを確認し、容器から机の上に移動させます。

ここで私がラットの腹をはさみで裂きます。はさみを上げ腹をプチと切った瞬間、私に何かいいようのない衝撃のようなものが襲ってきました。手が震えたわけでも動揺したわけでもありませんが、何かが終わった気がする...そう思いました。

ただ、実験は続いておりますのでサクサクと腹を裂き、喉元のあたりまではさみを入れました。

まず見えたのは腸です。ほんの少し脂肪で汚れていましたが、つるんとした褐色でした。それをどかすと肝臓が見え、肺、心臓も見えました。

まだラットは生きていたので、肺は膨らみ心臓もドクンドクンと脈を打っているのがわかりました。

それから各臓器をスケッチし、班員と話し合いをした後ラットを丁寧にくるんで実験はおしまいです。

 

あのはさみを入れた時に「科学の発展とはこういうことか」とほんの少しだけ理解できたような気がします。今まで人類が築いた叡智は多くの人間や動植物の犠牲の上に成り立っているのだと。解剖学がここまで発展したのは、そして今私が解剖学の知識を持っているのは数えきれない数のラットが犠牲になったからです。この実験がなければ一生生きた肺や心臓を見ることはなかったでしょう。

あの時何かが終わったと感じたのは、今までのほほんと生きてきた自分の意識なのかなあと考えたりします。今でもよくわかりませんが。

私の母校はもちろん、医歯薬学部や医療系の学校では毎年解剖実験が行われているでしょう。医療を学ぶ上で解剖学は必ず学ばなければなりません。

この時期になるとあの解剖実験を思い出します。もっと勉強しておけばよかったなと少し後悔したり...

それではこの辺で。 

2020.10.10

毒の概念

こんにちは、リノセウスです。
今回は毒の概念についてまとめてみました。

毒...なんと危険で魅惑的な言葉なんでしょう。

さて、「毒」っていったいどんなものでしょうか。
ペロッと舌先で舐めた瞬間体が震え、呼吸もままならなくなり数分~数時間ののちに死亡...といったものが想像されますね。
毒(どく) の意味ーーー健康や生命を害するもの。特に、毒薬。(goo国語辞書より引用)
体に害があれば毒と言えそうですね。果たしてその正体とは...

ある物質が生体に必ず好ましくない作用をもたらす、ということはありません。
あの動物には効くけどあの動物には無害という物質があります。
殺虫剤とか抗生物質がわかりやすいでしょうか。殺虫剤はある種の害虫、抗生物質は病原菌を対象に毒性を発揮しますが、人間にはあまりききませんよね。
絶対的に毒であるもの、というものは存在しないわけですね。
では、我々は何をもって毒と決めているのでしょうか。

そもそも、必ず体によいもの、必ず体に悪いもの、というものは存在しません。摂取する必要のないもの、というものはありますが。
例えば、食塩は摂取しすぎると、高血圧になる可能性が高まって高血圧脳症や心不全等様々な病気を引き起こしやすくなりますよね。さらに、体重65kgの人の場合、一度に32.5g~65gの食塩を摂取すると死亡すると言われています。大さじ2〜3杯という量なので、割と現実的です。恐ろしいですね...
しかし、食塩をとらないと低ナトリウム血症などの重症疾患を引き起こすこともあるので、まったくとらないというわけにもいかず摂取する必要があるのも事実です。

つまり、毒というものはなく、そのものの「摂取量」によって体にいいか悪いかが決まるわけです。塩だけでなく砂糖、水などでも毒になりえます。砂糖の致死量は約1kg、水の致死量は10~20Lと言われています。
逆に、一般的に毒とされているボツリヌストキシン(世界最強の毒、1gで人間2000万人を死に至らせることができると言われる)も、量を調整し精製することで、美容整形や神経外科の分野で薬として使われています。(ボツリヌストキシンって言葉の語感好きです)
まさに、毒と薬は表裏一体というわけです。

あらゆる物質は多かれ少なかれ何かしらの毒性をもっている...こう考えると、ある物質を「毒」と表現するのは微妙に間違っているのかもしれませんね。
それではこの辺で。

参考文献
佐藤和人、本間健、小松龍史「エッセンシャル臨床栄養学」医歯薬出版株式会社、2015
鈴木勉「大人のための図鑑 毒と薬」新星出版社、2015
薬理凶室「アリエナイ理科の大辞典Ⅱ」三才ブックス、2018

2020.10.6

お菓子作りとは、科学である

こんにちは、リノセウスです。
今回は、お菓子作りとはれっきとした科学実験であることを紹介します。
お菓子作り...お菓子と一口にいっても、数えきれない種類のお菓子がございますので、ここではスポンジケーキを作ることを想定しておきます。ケーキおいしいですよね、私ケーキ大好きなんですよ。

 

さて、スポンジケーキ作りに必要な材料といえば、薄力粉(ホットケーキミックス)、卵、牛乳、砂糖、バターがメインになり、バニラエッセンス等様々なワンポイントな材料が加えられるでしょう。スポンジケーキのおいしさといえば、ふわふわの口当たりのよい甘い生地ですよね。あのおいしさの秘密に迫ります。

 

スポンジケーキのふわふわ感、それは卵の起泡性によりもたらされます。卵のタンパク質には界面活性作用があり、表面張力が低下し空気を取り込みやすくなります。また、膜状に構造が変化するため、取り込んだ空気を保護しやすくなり安定した泡になります。
また、ホットケーキミックスに入っているベーキングパウダーの主成分は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)という物質で、加熱すると二酸化炭素を放出します。中学校の理科で習いますよね。二酸化炭素は気体ですので、これまた空気を発生させることになるので生地が膨らみやすくなるというわけですね。
この泡を安定させるための条件として常温であることや砂糖を入れることなどが加わります。逆にバターは泡を消す作用がありますので、バターは最後に混ぜてすぐに焼き始める、というレシピが基本ですね。
様々な食材の相互作用の結晶...お菓子作りはまさに科学であるといえます。

 

科学実験さながらのお菓子作りですが、その繊細さゆえに料理より難しいと言われています。
普段の食事として食べる料理のための材料や作業時間は、味には大きく影響しますが、料理の物性やテクスチャ(食感のこと)に与える影響は比較的少ないです。しかし、お菓子作りに使われる材料はお菓子の味と物性両方に大きく影響するので、材料の量や作業時間を厳密にしなければならないんですね。
例えば晩ご飯を作ろうとしたとき、材料の量が大体あっていればそれなりにおいしくなります。しかし、お菓子作りの際に材料を大体の量にしてしまう、加熱する時間を大雑把にするなどしてしまうと、パサパサだったりジットリした食感になってしまい、お菓子の本来のおいしさを大きく損ねます。これがお菓子作りが普段の料理より一般的に難しいと言われる所以ですね。個人的にはどちらも果てしなく難しいと感じます。精進せねば...

 

今回はほとんど紹介できませんでしたが、牛乳や砂糖などどんな食材にも科学は詰まっています。どこかで紹介できたらいいですね。それではこの辺で。

 

参考文献
尾嶋好美「「食べられる」科学実験セレクション 身近な料理の色が変わる?たった1分でアイスができる?」SBクリエイティブ、2017
辻英明、五十嵐修「食品学」健帛社、2012
久木久美子、新田陽子、喜多野宣子「調理学 おいしく安全に調理を行うための科学の基礎」化学同人、2014
齋藤勝裕「料理の科学 加工・加熱・調味・保存の化学変化」SBクリエイティブ、2017

2020.9.30

自己紹介

初めまして、栄養学に興味があるリノセウスと申します。
略してリノセウスです。
ここでは雑記やブログ的なものを掲載していこうかなと考えています。
内容としては、栄養学、化学、生物学などの勉強したこと、その日感じたことや好きな物のことなんかを書く予定です。
勉強したことでも何か記録に残さないと忘れてしまう…と焦り、こうしてブログに残そうと思った次第です。
1週間〜2週間に1つほど投稿したいと考えております。不定期になりそう。

勉強したことを文章にして発信するということは今までしたことがありませんが、科学はすばらしい!ということが伝わるような記事、へえーそうなんだ!と驚きを伝えられるような記事が書けたらいいなと思っております。

全ての記事は随時加筆、修正をいたします。
科学は日々変化し、それまで常識だったものがある日突然非常識になり得ますからね。
さらに、私が間違えて覚えてしまっていることもありますので、間違いに気付くことがありましたら指摘していただけるとありがたいです。

最後になりましたが、簡単に自己紹介をします。

栄養学に興味があるリノセウス
(リノセウス)
男、管理栄養士免許取得
勉強したいもの:栄養学、有機化学、生物学、分子生物学
好きなもの:ゲーム→ゼルダの伝説ポケモンファイアーエムブレムドラクエ大乱闘スマッシュブラザーズスプラトゥーン逆転裁判、シャドウバース、ドラクエライバルズ等

よろしくお願いします。

2020.9.30