科学はすべてを

栄養学に興味があるリノセウスです。科学について勉強したことや気になったことを書いていきます。雑記も書きます。

毒の概念

こんにちは、リノセウスです。
今回は毒の概念についてまとめてみました。

毒...なんと危険で魅惑的な言葉なんでしょう。

さて、「毒」っていったいどんなものでしょうか。
ペロッと舌先で舐めた瞬間体が震え、呼吸もままならなくなり数分~数時間ののちに死亡...といったものが想像されますね。
毒(どく) の意味ーーー健康や生命を害するもの。特に、毒薬。(goo国語辞書より引用)
体に害があれば毒と言えそうですね。果たしてその正体とは...

ある物質が生体に必ず好ましくない作用をもたらす、ということはありません。
あの動物には効くけどあの動物には無害という物質があります。
殺虫剤とか抗生物質がわかりやすいでしょうか。殺虫剤はある種の害虫、抗生物質は病原菌を対象に毒性を発揮しますが、人間にはあまりききませんよね。
絶対的に毒であるもの、というものは存在しないわけですね。
では、我々は何をもって毒と決めているのでしょうか。

そもそも、必ず体によいもの、必ず体に悪いもの、というものは存在しません。摂取する必要のないもの、というものはありますが。
例えば、食塩は摂取しすぎると、高血圧になる可能性が高まって高血圧脳症や心不全等様々な病気を引き起こしやすくなりますよね。さらに、体重65kgの人の場合、一度に32.5g~65gの食塩を摂取すると死亡すると言われています。大さじ2〜3杯という量なので、割と現実的です。恐ろしいですね...
しかし、食塩をとらないと低ナトリウム血症などの重症疾患を引き起こすこともあるので、まったくとらないというわけにもいかず摂取する必要があるのも事実です。

つまり、毒というものはなく、そのものの「摂取量」によって体にいいか悪いかが決まるわけです。塩だけでなく砂糖、水などでも毒になりえます。砂糖の致死量は約1kg、水の致死量は10~20Lと言われています。
逆に、一般的に毒とされているボツリヌストキシン(世界最強の毒、1gで人間2000万人を死に至らせることができると言われる)も、量を調整し精製することで、美容整形や神経外科の分野で薬として使われています。(ボツリヌストキシンって言葉の語感好きです)
まさに、毒と薬は表裏一体というわけです。

あらゆる物質は多かれ少なかれ何かしらの毒性をもっている...こう考えると、ある物質を「毒」と表現するのは微妙に間違っているのかもしれませんね。
それではこの辺で。

参考文献
佐藤和人、本間健、小松龍史「エッセンシャル臨床栄養学」医歯薬出版株式会社、2015
鈴木勉「大人のための図鑑 毒と薬」新星出版社、2015
薬理凶室「アリエナイ理科の大辞典Ⅱ」三才ブックス、2018

2020.10.6